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KU ルーバンとの共同研究成果が NEURON 誌に発表されました

2020.08.05

ベルギーのルーバンカトリック大学の Wim Vanduffel 教授のグループ、生理研の小林憲太先生との共同研究の論文が、2020年8月5日の NEURON 誌電子版に発表されました。

Vancraeyenest P, Arsenault JT, Li X, Zhu Q, Kobayashi K, Isa K, Isa T, Vanduffel W (2020) Selective mesoaccumbal pathway inactivation affects motivation but not reinforcement-based learning in macaques. Neuron, in press. DOI: https://doi.org/10.1016/j.neuron.2020.07.013

2020年8月5日 NEURON 誌電子版掲載(https://www.cell.com/neuron/fulltext/S0896-6273(20)30530-4


―霊長類の腹側被蓋野から側坐核への投射経路は動機付けに基づく意思決定に関与するが、強化学習には必ずしも重要ではないー

今回の研究では、私たちが開発したウイルスベクターの2重感染法 (Kinoshita et al. Nature 2012) をサルの腹側線条体 (VTA) から側坐核 (NAc) に至る経路に適用して伝達遮断を行い、覚醒下の霊長類を対象とする高精度 MRI 計測技術 (Vanduffel 教授が開発) と認知行動課題を組み合わせて効果を調べました。

その結果、

  1. VTA にシードを置いた覚醒下の安静時 MRI 計測により、前頭葉と側頭葉を中心とする広汎な脳領域間の結合性が増強すること
  2. 動機付け行動選択課題において「より我慢強く待ってより多くの報酬がもらうことを好む」行動特性が、「より短い待ち時間で少ない報酬を得る」ような傾向に変化すること
  3. 一方で、報酬がより高い確率で得られるゴールを選択するという強化学習課題における学習速度には変化が見られないこと

が明らかになりました。


相互に何度も行き来する6年越しの共同研究の成果でしたが、霊長類脳科学の新しい方向性を示す画期的な成果と言えます。下記写真は KU ルーバンでの手術室の風景(2014年2月の最初の訪問時)。何度もベルギーにウイルスベクターを打ちに行きました。 (伊佐)

左から John, Wim, Pascaline, 先方のテクニシャン, 伊佐かおる,伊佐正
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