Project 01
脳・脊髄損傷からの機能回復機構

マカクザルの頚髄において皮質脊髄路を損傷するモデルにおいて、手指の精密把持運動の機能回復過程における中枢神経系の可塑的変化に対して多様な手法を組み合わせ、脊髄だけでなく、両側の皮質運動関連領域、さらには側坐核などの中脳辺縁系が関わることを明らかにし、そのメカニズムを解析しています。
Project 01
マカクザルの頚髄において皮質脊髄路を損傷するモデルにおいて、手指の精密把持運動の機能回復過程における中枢神経系の可塑的変化に対して多様な手法を組み合わせ、脊髄だけでなく、両側の皮質運動関連領域、さらには側坐核などの中脳辺縁系が関わることを明らかにし、そのメカニズムを解析しています。
Project 02
一次視覚野が障害を受けて反対側視野が「盲」になった患者の一部には「視覚的意識を伴わない視覚」(盲視)と呼ばれる現象が観察されます。私たちは、片側の一次視覚野を損傷したサルに対して様々な実験手法を用いて、盲視に関わる神経回路と盲視に残された認知機能(短期記憶、意思決定、注意、意識)とその神経基盤を明らかにする研究を進めています。
Project 03
意思決定を環境依存的に柔軟に行えることが私たちの健全な生活の基盤です。私たちは、サルにおいて「ゴールが次々と変わる探索課題」(右図)においては、意思決定の探索(exploration)と搾取(exploitation)という意思決定モードに関わる神経機構の解明を目指し、「リスク選択課題」(左図)においては「高リスク高リターンと低リスク低リターン」の意思決定選択に関わる神経機構の解明を目指しています。
Ryo Sasaki, Yasumi Ohta, Hirotaka Onoe, Reona Yamaguchi, Takeshi Miyamoto, Takashi Tokuda, Yuki Tamaki, Kaoru Isa, Jun Takahashi, Kenta Kobayashi, Jun Ohta, Tadashi Isa (2023) Balancing Risk-Return Decisions by Manipulating the Mesofrontal Circuits in Primates. Science in press
Project 04
コモンマーモセットは小型の霊長類で、近年遺伝子改変動物の作製が可能になったことから新しいモデル動物として注目されています。私たちは、マーモセットが「小さな脳を持つ霊長類」であることと、「滑脳構造(溝がない、つまり全ての脳部位が表面に露出している)」ことを利用し、眼球運動とそれに緊密に関係した空間的注意の制御機構の解明を目指しています。これらの結果は精神神経疾患の重要なバイオマーカーとなると期待されます。
Project 05
中脳の上丘(superior colliculus)は、魚類、両生類、爬虫類、鳥類では視蓋(optic tectum)と呼ばれる進化的に古い脳構造で、脊椎動物の本能的な感覚・運動機能の制御に関わっています。浅層には視覚入力が入り、中間・深層には他のモダリティの感覚入力が入るとともに、行動を制御する出力が脳幹や脊髄に投射されています。私たちは急性スライス標本、麻酔または覚醒個体での電気生理学実験、ウィルスベクターを用いた光遺伝学、化学遺伝学による回路操作や2光子レーザー顕微鏡、さらには大規模回路のシミュレーションを用いて、上丘の局所回路の構造と機能、さらにそれら入出力系の機能を解明を目指しています。
Project 06
近年、遺伝子改変動物の作製やウィルスベクターを用いてげっ歯類を始めとするモデル動物において、光遺伝学(optogenetics)や化学遺伝学(chemogenetics)等の技術による回路選択的な機能操作実験が盛んに行われ、特定の回路の機能を選択的かつ因果的に立証することが可能になってきました。しかし、これらの技術はまだ霊長類ではあまり成功していません。霊長類で特に発達した高次脳機能の解明にはこれらの技術を霊長類で使用可能にすることが重要です。私たちはウィルスベクターを組み合わせて、霊長類において経路選択的に脊髄の特定経路の活動を制御して行動に与える実験に世界で初めて成功しました(Kinoshita et al. Nature 2012)。現在もこのような回路操作をさらに様々な回路において自在に行うために技術開発を行っています。
Project 07
(1)感覚・運動系の種差
感覚と運動を制御する神経回路、特に錐体路系の構造と遺伝子発現の種差を、様々な動物種や一部の疾患において研究しています。
Project 08
(2)感覚・運動系における情報処理機構のデコーディング手法を用いた解析
マカクザルの感覚・運動系の復習の部位からの多チャネル神経活動記録に対してデコーディング手法を適用して情報の処理過程を研究しています。