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上丘/視蓋に関する総説を共著で Current Biology 誌に発表しました

2021.06.09

Isa T, Marquez-Legorreta E, Grillner S, Scott EK (2021) The tectum/superior colliculus as the vertebrate solution for spatial sensory integration and action. Current Biology (review), DOI: https://doi.org/10.1016/j.cub.2021.04.001

もうかれこれ25年くらい、上丘の研究をしてきましたが、近年この領域は大変賑やかになって来たように思います。今回、オーストラリアのクイーンズランド大学でゼブラフィッシュの幼生の視蓋(非ほ乳類における上丘の相同部位)の研究をしているEthan Scottさんからのお誘いで、ヤツメウナギを用いた運動系回路研究の大御所のスウェーデンのカロリンスカ研究所のSten Grillner先生とEthanのポスドクのEmmanuel Marquez-Legorretaさん(途中で米国のJanellia Farmに異動)の4人でほぼ1年かけて、総説を書きあげました。私はStenとは旧知でしたが、他の二人とは初めて。それでも今風にZoomで2-3週に一回Meetingをし、世代も国籍も違う4人で進化的考察も含めて視蓋/上丘のヤツメウナギ、ゼブラフィッシュ、げっ歯類、霊長類その他の脊椎動物の上丘/視蓋の構造と機能に関する種間比較を議論し、まとめていく過程はとても楽しいものでした。特に今回、私の認識が改まったのは、通常、上丘―視床枕という膝状体外視覚系は進化的に古く、外側膝状体―大脳皮質視覚野という膝状体視覚系は進化的に新しいと考えがちですが、実は4億5千年前に我々と別れた最も原初的な脊椎動物であるヤツメウナギにも、網膜―視床―外套(pallium-皮質の原基)という経路はあるのだそうな。つまり「最初から我々は2つの視覚系を持っていた」ということになります。「二つの視覚系」は私のライフワークのテーマの一つですが、なかなか謎は深まるばかりです。上丘に関する総説は2002年にCurrent Opinion in Neurobiologyに単著で書いて以降、2006年にDahlem Conferenceの本で上丘による眼球運動制御で高名なDavid Sparks先生と共著で書かせていただいたこと、そして2009年にJ Neurophysiologyにこれまた上丘の解剖で有名なWilliam Hall先生と書かせていただいて以来です。いずれもとても楽しい経験でした。下の写真は最後のzoom会議の際の記念撮影。北大の吉田正俊さんと研究室の皆さんには文献収集などで大変お世話になりました。謝々。

(写真)左上:Sten Grillner、 右上:私、左下:Ethan Scott、 右下:Emmanuel Marquez-Legorreta。
最初はアジア-オセアニアとヨーロッパ時間で合わせればよかったのですが、
Emmanuelが米国に移ってからは3つの異なる時間帯をつながなくてはいけなくなりました。

(参考文献)

  • Isa T, Hall WC (2009) Exploring the superior colliculus in vitro. Journal of Neurophysiology (review), 102: 2581-2593.
  • Isa T & Sparks D (2006) Microcircuit of the Superior Colliculus: A Neuronal Machine that Determines Timing and Endpoint of Saccadic Eye Movements. Background paper for 93rd Dahlem Workshop on Microcircuits; The Interface between Neurons and Global Brain Function, pp1-34.
  • Isa T (2002) Intrinsic processing in the mammalian superior colliculus. Current Opinion in Neurobiology, 12:668-677.
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