マウスの上丘出力経路の選択的操作に関する論文が eNeuro 誌にアクセプトされました
齧歯類の上丘は本能的行動を制御する最も重要な中枢ですが、上丘から反対側の脳幹へ投射する交叉性経路は指向運動、同側の脳幹へ投射する非交叉性経路は逃避行動を制御するということが 1980年代に英国 Sheffield 大学の Peter Redgrave らのグループによって電気刺激と破壊操作の組み合わせで示されていました。今回、当研究室の伊佐かおるらは、Redgrave 教授およびタイ国チュラロンコン大学の Sooksawate 准教授、福島県立医大の小林和人教授、生理研の小林憲太准教授との共同研究でウィルスベクター2重感染法と Cre を用いてマウスの上丘からの交叉性経路と非交叉性経路に選択的にチャネルロドプシン2を発現させて光刺激を行い、それぞれ指向運動と逃避行動を誘発させることに成功しました。さらに逃避行動の方は小さい箱の中では flight response、広いステージの上では retreat response(後ずさり)を示すという文脈依存性を示すことから、単純な下行性の運動回路を直接興奮させるだけでなく、より認知的なシステムも関与し得ることが明らかになりました。
Isa K, Sooksawate T, Kobayashi K, Kobayashi K, Redgrave P, Isa T (2020) Dissecting the tectal output channels for orienting and defense responses. eNeuro, in press.