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Boston-MIT

2019.10.24

SfNの終了後、Ann Graybielが呼んでくれたので、シカゴからボストンに飛んでMITのMcGovern Institute(写真1)を訪問してセミナーをした。Annとは2003年にベルリンで翌年の2004年に行われるDahlem Conferenceのprogram advisory committee(他のメンバーがSten Grillner, Henry Markram, Jean-Pierre Changeaux と言った人たちでなかなか大変だった)で一緒になり、会の終了後半日、ベルリンの旧東側のペルガモン博物館などを二人で回って以来の仲。
Bostonにはセミナー前日の昼過ぎに着いたが、天気が良かったのでCambridgeを散策。MITのメインビルディング(写真2)やBroad InstituteやMediaLaboなどを外から見物した。McGovern Instではセミナーの他、Ann GraybielやEd Boydenの研究室の見学やBob Desimoneと面談。Bobとはマーモセットやマカクの研究の現況などMITでの「サル事情の話」。一方で成程そうか、と思ったのはMITではこの数年でNeuroscienceをmajorとする学生が半減したとのこと。ただこれはneuroscienceだけの話ではなく生物学全般にそうなのだとのことで、その代わりに増えているのが、bioengineering, medical engineering, neuroengieeringといった”—engineering”を専攻する学生たちなのだそうだ。特にAIとの関係で今後大きく伸びる分野だと考えられているとのこと。MITならでは、とも思うがBobによると中国もそうなのだそうで(Bobは北京大学のMcGovern Instにもかかわっており、中国の教育事情に詳しい)、「日本はどうだ」と聞かれて言葉を失った。今大学ではそのような工学系と生物系の融合は長年言われてはいるが遅々として進んでいない。その上、「日本では今でも高校で一番優秀な学生たちは医学部に行く」と言ったら信じられないような顔をして、「医者の仕事のかなりの部分はAIやロボットにとってかわられるのに」とのこと。これは最近ヨーロッパの友人からもよく聞くのだが、エンジニアになって売れる製品の開発に関わったほうがよほどお金になるので、医者は決して人気の職業ではない。日本の産業の衰退の原因は実はこのあたりに根源があるように思えてならない。医学部の教授をしておりながらこんなことを言うと顰蹙を買うのかもしれないけれど。これについては、もはや医学界の問題というよりは、やはりエンジニアの給与を長年安く買いたたいてきた日本の大手企業の経営者のマインドに問題があったということではないかと思う(その結果人材を医学部に取られ、退職後の優秀なエンジニアがサムソン等に流れた・・・一方で医者の世界はそんなにcreativeな場所ではない。せめて基礎医学研究で創造性を発揮しなくては)。
少し横道にそれてしまったが、話は戻って—engineeringのことであるが、優秀な人間がどこに流れるかで学問の趨勢が決まり、その変化はある意味で抗いようがなく、neuroscienceを長持ちさせることだけが大事ではないのだけれど、やはり「脳と心」の謎を解き明かしたいと思う人たちの系譜が今後も続いてほしいなとは思う。
あと、写真はセミナー後の昼食。Ann(右端)に加えて、Emilio Bizzi先生が来てくれたのはとても嬉しかった

右が利根川先生のPicower Inst、左がMcGovern Inst.
Massachusetts AveのMITのメインビルディング。
宿泊したKendall Hotelの1階のレストラン”The Black Sheep”。右端がAnn。左端がEmilio Bizzi先生。
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