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盲視サルの視覚オペラント学習に関する論文がScientific Reports誌に掲載されました

2021.07.21

一次視覚野が損傷を受けると盲となるとされているにも関わらず、「盲」視野に提示された対象に対して行動できる「盲視(blindsight)」と呼ばれる現象のメカニズムをサルを用いて研究してきました。一つの流れは一次視覚野をバイパスする視覚伝導路の研究で、それは最近のKinoshita et al. (Nat Comm 2019), Takakuwa et al. (J Neurosci 2021), Kato et al. (Comm Biol 2021)等において、視床枕及び外側膝状体から高次視覚野や頭頂連合野に至る経路が重要であることを明らかにしてきました。もう一つの流れは、「盲視で可能な認知機能」に関するものです。そこでわかってきたことは、盲視は決して「無意識の反射的運動」というわけではなく、場所に関する短期記憶(Takaura et al. J Neurosci 2011)であるとか、古典的条件付け(Takakuwa et al. eLife 2017)といった、より高度な認知課題も遂行可能であるということでした。

そしてさらに今回、真っ暗なスクリーン上の隠れたターゲットの位置を眼球運動で探すというHidden area search task(眼球運動版Morris water maze課題のようなもの)を用い、ターゲットが見つかったということを視野周辺に点灯させる視覚手掛かりで教示するという課題を訓練したところ、盲視野に手がかりが提示されても、学習が進む、つまり、より短時間で指標を探し当てられることができるということがわかりました。このようなオペラント条件づけが可能であるということは、既に報告した古典的条件付け課題と同様、一次視覚野をバイパスする視覚経路とドパミン細胞などの報酬系とのかかわりで説明できるものと考えています。また、その手掛かりをどれくらい「意識」できていたかという点については、手がかりが健常視野に提示された場合には、サルはすぐに探索を止めますが、障害視野に提示された場合は探索を続けます。つまり、障害視野においては手がかりを見たというconfidenceが低いことになります。これも「意識できたかどうか」の有用な指標であると考えられます。

この論文は、英国のシェフィールド大学のPeter Redgrave教授とAbdelhafid Zeghbib研究員との共同研究で、Scientific Reports誌に発表されました。

Kato R, Zeghbib A, Redgrave P, Isa T (2021) Visual instrumental learning in blindsight monkeys. Scientific Reports 11, 14819. https://doi.org/10.1038/s41598-021-94192-7


(図)A. 今回用いたHidden target search task. B&D. 健常側視野に手がかりが出された際のが学習曲線。青、赤、緑の位置にtarget位置は変更されている。C&E. 盲視野に手がかりを提示した場合の学習曲線。
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