Neuroscience 2019
今年のシカゴでの北米神経科学会にはラボから7つの演題を出した(その他X題の共同研究)。京大に引っ越して3年余り、だいぶ立ち上がってきた感じといって良いか。ただ、実際に論文にするにはあとひと頑張り、ふた頑張り必要な仕事ばかりでなのだけれど、この段階で一度色々コメントをもらっておくのは有意義かと思う。
これまで3年間務めたプログラム委員の任期もこれで終わり。プログラム委員会は年3回。1回目は10-11月の大会期間中にあり、色々一般的なことについて議論をしてルールを決める。その次に2月に Special lecture や symposium の提案を決める委員会がワシントンで行われ、その後5月末に提出された抄録をもとに各委員が行ったセッショニングの結果を確認、調整して最終的に確定する委員会がこれもワシントンで開かれる。結構大変な仕事だったけれど一言でいうと ”good to know” というところか。この規模の会議がどのような人たちの努力でどのようにして成り立っているのかを実際に見て知ることができたのは有意義だったと思う。
一方、SfN が心配しているのは参加者の減少である、アメリカ国内からの演題数はこの数年横ばいだが、その次に多いカナダ、日本、英国、ドイツの4か国がいずれも2割程度減少。一方で中国と韓国が漸増。減少にはいろいろな原因が考えられるが、会員数についても日本人の正会員が最も年齢が高い集団であり、引退した人たちがそのまま退会するのが減少の主な要因と聞いた。一方、学生会員の数はあまり変化していないとのこと。これらを綜合すると、大学院修了後アカデミアに残らないため新しい正会員が補充されない、ないしは残っても参加できない。従ってこれまで SfN に積極的に参加してきた中堅ラボが若手を SfN に送る体力(資金力と人材)がなくなってきているのが原因ではないかと想像する。実際にはどうなのだろうか。
あと、欧州からの参加者が減っているのは FENS の充実とともに、トランプの政策で中東から来ている大学院生が SfN に参加するビザを得られず、それに憤りを感じている欧州の PI も参加しなくなっているという話をよく聞く。最近のネット記事(”US Travel Ban Disrupts The World’s Largest Brain Science Meeting“)の2番目に出てくる Hamid Ramezanpour さんは Tuebingen の Peter Their の学生で、現在共同研究をしている。彼と彼の奥さん(同じく Tuebingen の神経科学の大学院生)は SfN に行けないので昨年は日本神経科学会に参加し、「とても良かった」と言ってくれた。確かに我々の学会を選んでくれるのは嬉しいけれど複雑な気持ちである。