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Experimental Neurology 誌への総説

2022.03.20

Temple 大学の George Smith さんから、Experimental Neurology 誌で Gene modifying strategies for repair after spinal cord injury という特集を組むの原稿を書いてほしいと言われた。

Your laboratory has developed an excellent strategy for specifically labeling and silencing propriospinal neurons using HiRet-lentivirus expressing tetanus toxin C-fragment.  Indeed, my laboratory has published several papers using this 2-viral approach.  I would like to request you or a direct colleague to submit a review concerning this excellent silencing system. とか 

This is a wonder set of tools that many laboratories are now using and will continue to use.  とか

よくわかっていることを言ってくれるので引き受けることにした。

実際に、逆行性のベクターと順行性のベクターを組み合わせたintersectionalな経路選択的遮断法は、今では多くの人が多くの経路で使っているけれど、実際にきれいに成功させたのはげっ歯類も含めて、我々の2012年のサルでの仕事(Kinoshita et al. Nature (2012))が最初である。

当時はまだマウスの人たちは皆 Cre マウスにウィルスを使うのが普通で、ベクターを2種類使うと免疫反応などが起きて難しいのではないかなどと考えていた。ところが Tg 動物を作るのが困難な霊長類で何とかしなくてはいけなかった我々は、ちょうど小林和人先生の逆行性ベクターが開発されたところだったので、それに渡邉大先生が得意とする Tet の制御系を組み合わせて私がやってきた脊髄介在ニューロン系に適用することで成功することができた。ただ、このことを認識している人は一部の人を除いて必ずしも多いわけではなく、我々はそのことを言い続けなくてはいけない。今でも、「なんで AAV2retro でなく HiRet を使っているの?(2012年当時まだ AAV2retro はなかった!)」なんていうまとはずれの質問を受けることもある。また日本人でも日本人のオリジナルな発見、開発を敢えて無視して外国人におもねるような態度をとる人もままいるというのも現実である。今回の特集号でも、他の author でそのことをきちんと認識していない著者の論文を Smith さんが回してきてくれ、それを査読者として丁寧に修正したりと・・・。日本人は結構こういうことで諦めてしまうけれど、やはり折に触れて会議や総説、または査読者としてただし、主張していく努力は必要なのだろうと思う。

総説については以下、ご覧ください。

Isa T (2021) Double viral vector intersectional approaches for pathway-selective manipulation of motor functions and compensatory mechanisms. Experimental Neurology, 349:113959. doi: 10.1016/j.expneurol.2021.113959. 

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