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霊長類の腹側被蓋野から全脳への投射パターンを解析した論文が Cerebral Cortex 誌にアクセプト!

2020.12.11

腹側被蓋野 (VTA) は、中脳よりのドーパミン投射系の起始核として脳の多様な部位に投射し、認知機能の調節に重要な役割を果たすとされていますが、霊長類における投射系の詳細は、驚くことに、実は20年またはそれ以前に主として逆行性とレーサーを用いたいくつかの文献があるのみで詳細は不明でした。

今回、我々はベルギーの Katholic University Leuven の Wim Vanduffel 教授らのグループと共同し、マカクザルの VTA に高感度の順行性ウィルストレーサーを注入し、全脳での投射先を解析しました。その結果、VTA の外側及び内側の黒質緻密部からは主として感覚運動野へ。そして内側 VTA ないしは腹内側視床からは内側前頭葉や側頭葉に主として投射があるという違いがあること。前頭眼窩回皮質は両者方強い投射を受けること。また皮質投射には浅層(I層)における広汎な投射と中間ー深層(II-VI層)におけるしばしばパッチ状の構造を作るという2種類の投射パターンが明瞭に分かれていることなど、これまで知られていなかった投射様式が明らかになりました。この研究に際しては KU Leuven の大学院生の Muhammad Zubair さんと Sjoerd Murris さんが京都に長期滞在して解剖学的解析を行いました。

Zubair M, Murris S, Isa K, Onoe H, Koshimizu Y, Kobayashi K, Vanduffel W, Isa T (2020) Divergent whole brain projections from the ventral midbrain in macaque monkeys. Cerebral Cortex, in press.

(図)外側 VTA 及び内側黒質緻密部への注入例 (M1, M2) と内側 VTA 及び腹内側視床への注入例 (M3) における皮質への投射密度の違い。

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