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脊髄損傷後の運動麻痺改善に重要な脳内経路の解明 ―神経リハビリテーション療法への応用へ期待―

2024.10.23

概要

マカクザルの脊髄損傷モデルを用いて、リハビリテーションによって手指の運動機能が改善していく過程において、脳の運動前野をつなぐ大脳半球間経路が運動機能回復に重要な役割を担うことを明らかにしました。本成果は、2024年8月22日(英国時間)に国際学術誌「Nature Communications」にオンライン掲載されました。
本研究では2種類のウイルスベクター(注)を用いて特定の神経経路だけを一時的に伝達遮断する革新的手法を用い、脊髄損傷からの回復過程において運動前野間の半球間経路のみを選択的に遮断した場合に、回復していた手指の運動機能が再び悪化することを発見しました。さらに皮質脳波活動の記録・解析を行うことで、損傷のない状態ではこの半球間経路は抑制し合っているのに対して、損傷後の回復過程においては促進的に働いていることを見出しました。これらの結果から、健常時には抑制されている運動前野の神経活動が、脊髄損傷からの回復期には上昇することによって、運動機能回復に寄与することを明らかにしました。本研究結果は脊髄損傷や脳梗塞などで麻痺となった患者の神経リハビリテーション療法への応用が期待されます。

(注)ウイルスベクター:標的細胞に取り込まれ、目的の遺伝子を発現させる目的で作られた「遺伝子の運び屋」。ウイルスをもとに作られているが複製・増殖能は失われている。

Credit:Kanon Tanaka

論文情報

Stage-Dependent Role of Interhemispheric Pathway for Motor Recovery in Primates.
Mitsuhashi, M., Yamaguchi, R., Kawasaki, T., Ueno, S., Sun, Y., Isa, K., Takahashi, J., Kobayashi, K., Onoe, H., Takahashi, R., & Isa, T. (2024). Nature Communications. doi: 10.1038/s41467-024-51070-w

マスコミ

本研究成果は下記でも紹介されました。ぜひご覧ください。

  • 京都大学高等研究院ヒト生物学高等研究拠点(ASHBi)【ニュース】Link
  • 生理学研究所(NIPS)【プレスリリース】Link
  • 日本神経科学学会【神経科学トピックス】Link
  • 朝日新聞(2024年10月16日朝刊 34面)Link(朝日デジタル)
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